大建工業の
サステナビリティ

Daiken Sustainabilities

<span>和紙を畳おもて</span>に!? 日本伝統の<span>畳文化を維持</span>するために立ち上がった大建工業の挑戦

和紙を畳おもてに!? 日本伝統の畳文化を維持するために立ち上がった大建工業の挑戦

2024年1月31日

お話を聞いた方:足立 哲也(大建工業株式会社 畳材部長)
インタビュアー:こにわ(サンミュージック)

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“「建築資材の総合企業」DAIKEN”として、住宅・建築業界ではおなじみの大建工業株式会社(本社:大阪府/本店:富山県)。幅広い分野で活躍している大建工業の事業に取り組む企業姿勢や魅力を伝えていくWEBマガジン「DAIKEN魂!」。
第12弾は、機械すき和紙を使ったDAIKEN独自の畳おもて「和紙畳おもて」をテーマにインタビューしました!!

こにわ:みなさん、こんにちは。こにわでございます。本日も前回に引き続き、大建工業さんの新宿ショールームにお邪魔しています。
今回はこちらのショールームにも展示されている大建工業さんの人気商品『和紙畳おもて』について、詳しく伺っていきたいと思います。
今回お話を伺うのは、足立さんでございます。足立さん、よろしくお願いいたします。

足立:よろしくお願いいたします。

畳床のシェアは9割! 日本の文化を維持するために和紙畳を開発

こにわ

こにわ:まず、名刺をいただいたのですが、こちらの部署名はなんと読むんですか? タタミザイブ?

足立:畳の材料の部と書いて「畳材部/じょうざいぶ」と読みます。

こにわ:はーなるほど、何畳って言いますもんね。珍しい部署ですよね。

足立:実は建材メーカーで畳材部があるのは大建工業だけなんですよ。畳材部の発足は昭和40年代に『ダイケンたたみボード』という商品を発売してすぐですので、歴史も長い部署になりますね。

こにわ:すごいですね。畳は日本文化には欠かせないものですしね。

足立 哲也

足立:そうなんです。実は畳というものは平安時代からあるんです。
一般的に畳は、「畳おもて」「畳床(たたみどこ)」「畳縁(たたみべり)」の3つで構成されていて、畳の中身である畳床の素材は藁、畳表面部分の畳おもての素材はイ草、という形でそれがずーっと近年まで1000年ぐらい続いていました。

一方で、大建工業と畳の歴史は1958年の岡山工場創業開始時から始まっています。その頃に畳床の素材がワラ床からボード畳に切り替えられつつあることに着目して、畳床の開発を検討し早い段階で社宅や独身寮などで実際に使用していました。
そして、1973年には畳にぴったりの柔らかさを備えた、インシュレーションボードという天然木質繊維を使った畳床『ダイケンたたみボード』を開発し、1980年には『ダイケン畳』と改称して販売を始めました。

こにわ:昔から畳に注目していたんですね。そして、はじめは畳床の開発だったと。

足立:はい。「ダイケン畳」というテレビCMも制作して畳店などにアピールしていましたので、見たことがある方もいるかもしれません。

こにわ:テレビCMとは力が入っていますね。そこからどうなっていったんですか?

足立:畳床に関しては、その後シェアを拡大し続けて、現在ではたたみボードのシェアの約9割を大建工業が占めている状態です。

足立 哲也

こにわ:9割ですか!? それはすごすぎますね。

足立:そのように昔から力を入れていたんですが、畳に不可欠なイ草の供給量も年々減少し続けていて、弊社としても頭を悩ませていたんです。
そこで、大建工業では、畳のある家で生活をする日本文化の維持に貢献すべく、工業的に品質の安定した畳おもてを作り出そうと考えたのです。

こにわ:おお! 熱いですね。さすが、昔から社会課題に取り組む大建工業さんです。

足立:1989年から畳おもての開発に着手したのですが、最終目標として「高温多湿な日本で平安時代から使用されているイ草に近い、吸放湿性を工業的に再現すること」を掲げていたので、研究開発にはかなりの苦労があったようです。

こにわ:そりゃあ苦労しますよね。簡単に同じようなものが再現できるのであれば、イ草以外の畳がもっとあってもいいですし。

足立 哲也

足立:そうですね、それで様々な素材を試し尽くした結果、たどりついたのが「和紙」だったんです。和紙といっても、いわゆるコウゾとかミツマタ等を使った手すきの和紙とは全然違いまして、針葉樹のパルプを原料にした機械すきの和紙を採用することで、安定した品質と生産性を実現しました。

こにわ:なぜ和紙を選んだんですか?

足立:やっぱりイ草の良さを残したい、というところです。イ草の良さであるフワッとした柔らかさや、調湿機能が高くて手触りがサラサラしているところを再現したい。それで行き着いたのがこの和紙だったんです。

機械すきの和紙

こにわ:なるほど。今、私が持っているのがその機械すきの和紙ですよね。まさにこれから畳が作られていると。

足立:そうです、それから作られています。

こにわ:これをどのような感じで畳にしていくんですか?

足立:こにわさんが左手に持っている薄い機械すき和紙をぐるぐるねじって、右手に持っているようなこよりの状態にしていくんです。

機械すきの和紙

足立:このように機械すき和紙を直径1mmほどのこよりにして、中に空洞を作ることでイ草の柔らかさを再現しました。ただ、そのままだと紙は弱いので、それをさらに樹脂コーティングすることで、耐摩耗性、撥水性、耐汚染性などの機能性を付加することにも成功しました。

こにわ:おお、すごく細くなりますね。

足立:細いですね。これをイ草と同じ織機(しょっき)で織り上げていくんですよ。

織機

こうして吸放湿性のあるイ草の良さを残しつつ、新たな性能をプラスした和紙畳おもて『ダイケン健やかおもて』が完成して、1996年から販売を開始して今に至ります。

ダイケン健やかおもて

機能性とカラーバリエーションが豊かな和紙畳 年間100万畳の採用実績!

ダイケン健やかおもて

こにわ:うーん、和紙をこよりにして織り込むという発想がすごいなぁ! 畳に対する大建工業さんの熱い想いと技術力の結晶というわけですね! それでは、この和紙畳がイ草とどのように違うのか、その特徴についてもっと詳しくお聞きしてもよろしいですか。

足立:まず、和紙って聞くと弱そうなイメージがあると思うのですが、加工をすることで耐久性がめちゃくちゃ強くなっています。傷のつきにくさを評価する耐摩耗性だと、イ草の3倍ほどの強さがありますね。

ダイケン健やかおもて

こにわ:おおーっ、それは長持ちしそうですね。

足立:他にも、弊社の和紙畳おもてはすべて抗菌仕様になっており、衛生的でお子様にも安心してお使いいただけます。また、日焼けにも強いため、表面の美しさを長期間キープすることができます。
樹脂コーティングされていて撥水性にも優れているので、万が一飲み物をこぼしても拭くだけできれいになります。

ダイケン健やかおもて
ダイケン健やかおもて
ダイケン健やかおもて

こにわ:いやー、これでもかってぐらい次から次に機能が上がってきますね、参りました(笑) ちなみに色のバリエーションとかもあるって聞いたんですが…。

足立:はい。そこも和紙の良いところで、伝統的な畳の色はもちろん、ポップで個性的な色柄など、豊富なカラーバリエーションをご用意しています。伝統的な畳をあらゆるシーンで楽しんでいただきたいと思っております。

ダイケン健やかおもて

※ショールーム 畳サンプル展示コーナー

ダイケン健やかおもて

こにわ:畳なのにカラーも豊富と。いやー、参りました(笑) 人気製品だというのがよくわかります。これだといろいろなところに採用されていたりするんじゃないですか?

足立:はい。一般の住宅はもちろん、旅館や有名ホテルなどにもデザイン性や機能性が高く評価されていて、年間で100万畳以上の採用実績があります。

こにわ:1年で100万畳って……もう想像もできないですが、とにかくすごいことはわかりました!(笑)
畳って素足で歩いても気持ちいいし、すぐに寝っ転がってくつろげるのが最高なんですよね。今は畳がない家も多いと思いますが、こんなに機能的でデザインも選べるなら、これはもう、見直してみた方が良いのかもしれない。

足立:そうですね、家の中に畳のスペースがあると、気軽に和のテイストが楽しめたり、癒やしが得られたりするなど、多くのメリットがあります。畳は柔らかいうえに安全性も高いので、赤ちゃんや小さなお子さんがいる家庭におすすめしたいです。足音も気になりにくいですしね。
弊社のホームページや全国各地にあるショールームなどもチェックして、採用のご検討をいただきたいと思います。

関連ページ⇒「DAIKEN和紙畳
     ⇒「ショールーム

国産イ草あっての和紙畳 畳文化を守るために自治体・企業が協力

こにわ:ところで本日、足立さんは熊本からこちらにいらしたとのことですが。熊本といえば日本で一番イ草が生産されている場所だと聞いたことがあります。

足立 哲也

足立:そうです。実は現在、日本のイ草はほぼ熊本でしか生産されていなくて、畳業界の聖地といったら熊本県の八代なんですよね。

こにわ:あー、八代ですか。

足立:まさに昨日はその八代市に行っておりまして。私どもは和紙畳おもてを製造販売しているので、イ草とは競合関係にあるんですよね。しかし、昨今は畳自体が減ってきているじゃないですか。

こにわ:おうちがどんどん洋風になってきていますからね。

足立:そうです。そういった傾向もあって、イ草と和紙、素材同士でライバル視して戦っている場合ではないと、共同戦線を張りましょうという流れになってきているんです。僕らも国産のイ草がなくなってしまったら、もう畳の文化そのものがなくなってしまうと思っていますので。
実際、熊本県のイ草の作付面積はピーク時のおよそ18分の1以下にまで減少しています。

い草

こにわ:ええっ、そんなに減っているんですか!? なるほど、争っている場合ではありませんね。国産のイ草あっての和紙畳おもてでもありますし。

足立:そういった背景があって、畳材部の特約店様が八代市と氷川町の3者で協議を重ね、八代産畳表認知向上・需要拡大推進協議会を立ち上げたのです。弊社も委員として参画し、弊社社長の億田の代理という形で会議に出席しました。

こにわ:すごいですね。何か今聞いているだけでレベルの大きな取り組みのように感じます。私もイ草に関して中国産が結構多いっていうのを聞いたことがあるんですけど。

足立:そうですね、畳表全体の約6割ぐらいは中国産イ草なんです。ただ、生産工程や管理などの問題で国産イ草と比べると品質に差が出てしまいます。

こにわ:なるほどねぇ。そもそもなんですが、畳というのは本来どのぐらいの期間使えるものなんでしょうか。

足立:そうですね、普通なら7〜10年ぐらい経ったら張り替えていただきたいですね。

こにわ:7〜10年といったら生まれてきたお子さんが小学校低学年になるぐらいの年月ですから、かなりの長期間ですよね。

足立:そうなると、中国産イ草畳は表面が傷んで毛羽立ったりしてきやすいので、その状態の部屋がある家庭で生活してきた人にとっては、畳は掃除が面倒くさいと思っている方もいるかと思います。他にも、過去に何度もダニ駆除のテレビCMを見たことで畳に対してちょっと嫌なイメージが刷り込まれている方もいらっしゃるかもしれません。

新築の住宅では和室が入ることは少なくて、オプションで選ぶような形が多くなっています。むしろ和室を採用するのはちょっと贅沢になっていますね。

こにわ:今は畳の部屋があるのは良い家ってイメージもあります。昔は全部和室だったんですけどね。むしろフローリングの方が珍しくて、板張りの部屋があると凄いって感じだったのに。

足立:そうですね、昔は日本の家といえば畳が当たり前で、洋室が出てきたから和室という単語ができたんです。それまでは区別する必要がなかったんですよね。今は洋室に場所を取られて和室や畳のスペースがどんどん減ってしまっている状況です。
ただ、我々も調査会社に依頼してアンケートを取ったんですけど、本当に畳が嫌いな方っていうのは全体の10%ぐらいで、約70%の方が畳は好きと回答しています。ほとんどの人は畳が嫌いということではないんですよね。和室が減っているのは建てる側の都合というのもあるかと思いますが。

こにわ:そうですよね。そんな今だからこそ、畳の良さというのを伝えていったほうが良いと思うんですよ。足立さんが考える畳の良さってどんなところでしょうか。

足立:畳の良さといえば、まずその上で気軽にゴロゴロ寝転がれるところですよね。床材としては珍しく柔らかい素材で、人間って足元が柔らかいとすごく落ち着くんですよ。

足立 哲也

こにわ:いやー、わかります。畳の上を裸足で歩いたり、寝っ転がったりするとやっぱり気持ちいいですよね。フローリングだと直接座るのも気が引けますし。

足立:畳のキーワードは柔らかさや手触りですね。あと、家に親戚などが集まった時、テーブルだと置いてある椅子分の人数しか座れませんけど、和室なら座布団を敷けば何人でも座れるような空間が作れるんです。さらに布団を敷けば寝室にもなるなど、客間として優秀です。 洗濯物をたたんだり、アイロンをかけたりといった気軽に使える作業スペースとしても便利ですし、赤ちゃんやお子さんがいるご家庭では安全に遊べる場所としてもいいですよね。
他にも畳が減ることによって、みんなで集まって畳の上でカルタをするといった日本の文化そのものに触れる機会も少なくなってきています。畳の良さを知ってもらって同時にそうした文化も復活させたい、畳の使い方からPRしていきたいですね。

畳の良さを残しつつ、時代に合わせて愛される製品を作り続ける

こにわ:それでは最後に大建工業さんとして、畳材部として、今後の展望や目標などありましたらお聞かせください。

足立:一つの大きなテーマは、八代にある国産の畳おもてを手掛けている業界さんと密に連携をとりながら、畳文化の継承をしていくということです。イ草の畳がなければ、畳市場そのものが無くなってしまうと思っていますので、今後は色々な対策をとっていきたいと思います。

また、会社的にはやっぱり新しい製品を開発していく必要があると思います。メーカーとしてもっと多くの方に「これいいね」と言ってもらえて、畳を採用するきっかけになるような製品開発に取り組むことが重要だと思います。畳材部としてはそれを多くのお客様に知っていただき、畳文化を残していくことに力を入れていきたいです。

これからも日本の大切な文化を維持すべく、伝統的な畳の古き良き心は残しつつ、時代に合った新しさ、機能性、意匠性も加えて、末永く多くの方に愛される製品を事業部とともに作っていきたいと考えています。

こにわ:本日はありがとうございました。今回も貴重なお話を聞けて楽しかったです。 それではご一緒に!

こにわ・足立:『DAIKEN魂!』

足立 哲也